NFTの事例について③
はじめに
今回の記事も、NFT企画の記事になります。前回は、NFTの利用事例として、デジタルコンテンツへのアクセス権管理や、リアルコンテンツと絡めたNFT利用について紹介しました。これらの事例については、未解決の課題も存在していますが、中央集権的な仕組みでは解決できない課題の解決策として模索されている取り組みになります。
このように、現在模索されているNFTのユースケースとしては、前回、前々回の記事で紹介させていただきました。そこで、今回は、NFTと関わりながら、周辺で動き始めている事例について取り上げたいと思います。
事例一覧
カストディアン
まず、カストディサービスとは、事業者に暗号資産の保管(カストディ)をしてもらうサービスのことを指します。このため、上記のHexTrustの事例以外でも、日本だと今年度に入って提供を始めたCoincheck NFT(β)ようなサービスも、NFTのカストディサービスを提供していると言えます。ちなみに、カストディサービスを提供している事業者のことをカストディアンと呼ぶことがあります。
なお、カストディサービスは、CtoCの交換取引所のサービスを共に併設していることが多いです。これは、NFTの取引で仲介料金を得ることで、保管のための維持費の確保や、NFTの流通量を増やす目的があると考えられます。(ちなみに、OpenSeaのようなカストディサービスを併設せず、DEX(Decentralized EXchange)のみ提供している場合もあります)
また、NFTのカストディサービスの場合、NFT自体ではなく、コンテンツの方をカストディする場合もあります。(※: デジタルコンテンツをIPFSに保管する場合は、IPFSのキャッシュが残り続ける間は誰でもダウンロード可能なため、必要ない場合があります)このため、例えば、nanakusaでは、NFTの閲覧を所有者に限定する機能を提供しています。nanakusaの実装方法は明らかではないので分かりませんが、もしデジタルコンテンツ側の保管を事業者内で実施し、閲覧権限の判定チェックを行って実装している場合は、デジタルコンテンツ側のカストディサービスを提供していると言えるでしょう。
さらに、リアルコンテンツとNFTを掛け合わせたサービスにおいては、カストディサービスの重要性が増す可能性もあります。これは、MercariのようなCtoCサービスでも共通していますが、ブロックチェーンだけだとリアルコンテンツ側の流動を保証することが難しいため、高額商品になる場合はカストディアンの仲介が必須になることが考えられます。
規制/ガイドライン
これらの事例については、NFTの法律的な扱いに焦点を当てたニュースになります。
NFTは、所有権を保証するコンテンツや取引方法によってセキュリティトークン(ブロックチェーンで実装された有価証券)や賭博の商品になったりする可能性があります。このため、NBA Top Shotの事例では、配布されているモーメント(NBAの試合中のワンシーン動画)の所有権を取引することで利益を得られることから有価証券に当たるのではないかとして訴訟が発生しました。
また、日本の場合では、主にブロックチェーンサービスの開発を進めるに当たって金融庁等へヒアリングした結果を、日本暗号資産ビジネス協会が分科会によって法律的な解釈をまとめたガイドラインを発行しています。この中では、NFTの法規制に掛かる検討フローチャートやブロックチェーンゲームでの賭博法との関係のような知見がまとめられています。
おわりに
今回は、NFTの周辺で行われている事例として、暗号資産を保管するカストディーサービスと、法規制に対する活動について取り上げていました。ちなみに、カストディサービスについては、ユーザーの資産保護との兼ね合いもあり、議論が活発になっている話題でもあります(カストディサービス事業者が廃業した際のコンテンツ提供可否の兼ね合い等)。また、法規制については、ブロックチェーン技術自体が比較的新しいサービスである上、金融方面と関わりが大きいビジネスになるため、規制側との交渉や解釈に関する議論が必要となっています。
ただ、一方で、2018年以降、法律の新規制定やパブリックコメントの募集が広く行われてきており、少しずつですが着実に進んでいるニュースが散見される領域でもあります。このため、ビジネスの立ち上げができないと諦めるのではなく、すでにある事例やプロジェクトから提供される情報を見ながら検討を進めていく予定です。
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