NFTの事例について①

by 仲尾 和祥

はじめに

今回の記事は、先週から始めているNFT企画の1つになります。最初である先週の記事 ではNFTについての説明と、そのユースケースが大きく3つ(鑑定士方式、金庫窓口方式、博物館方式)に分けられていることを紹介しました。そこで、今回は前回の予告通り、実際のニュース記事やサービスを引用しながら、NFTの利用事例と、その解説をしたいと思います。ただ、イロイロと引用していると、結構な量になってしまったので、今回はブロックチェーンゲームとデジタルアート/コンテンツ、そして、これらを取り扱うNFTオークションについて紹介したいと思います。

事例一覧

ブロックチェーンゲーム

ブロックチェーンゲームの事例として最初に取り上げたいのは、NFT技術の発端となったCryptoKittiesです。このゲームは、NFTで作られた猫を育成し、組み合わせて新しい猫を作成する育成ゲームになっています。このゲームが発端となり、NFT技術が急速にブロックチェーン業界で広がっていきました。

次に海外の事例について紹介します。こちらの事例については、主にリアルコンテンツ(スポーツ)と組み合わせたトレーディングカードの事例が多くなっています。NBA Top Shotは、NBA(National Basketball Association)で活躍する選手や試合シーンのトレーディングカードを収集し、売買できます。また、Sorareはサッカー選手のトレーディングカードゲームになっています。なお、Sorareの場合は、収集したカードでチームを作り、実際のサッカーの試合と連動したゲーム上のランキングで競わせることができます。ちなみに、2020年8月には、Jリーグの選手が参戦しました

最後に日本の事例について紹介します。日本のブロックチェーンゲームは、主にスマホゲームにNFTやブロックチェーンの要素を詰め込んだ構成になっています。例えば、MyCryptoHeroesは、NFT化されたキャラクターをショップやオークションで取得し、敵モンスターを倒すクエストや、PvPを行うことができるようになっています。また、キャラクターの他にも、キャラクターを強化するための武器や、ランドと呼ばれるコミュニティの所有権がNFT化されています。ちなみに、MyCryptoHeroesは、Ethereumでのブロックチェーンゲームとして、取引高/取引量/DAUで世界1位を記録したことがあります。他に、CryptoSpellsやBraveFrontierHeroesですが、こちらもキャラクターをNFT化しており、オークション等を利用してプレイヤー間で売買することができます。また、これらのゲームはMyCryptoHeroesのキャラクターと連動しており、MyCryptoHeroesのキャラクターをコンバートすることによってCryptoSpellsやBraveFrontierHeroesのキャラクターを取得することができます。(参考: [Tech] NFT Converter Contractについて )

デジタルアート/コンテンツ

デジタルアートやデジタルコンテンツのNFT利用については、下記のようなニュースが流れて以降、その金額の大きさから注目を集めています。

この影響を受けて、日本でもNFTの販売を行うサービス提供者(CryptoArtTown)や、NFTを使ったデジタルアートに対する著作権の証明(A Trust)を行うようなサービスが生まれてきています。また、デジタルアートとして、絵画以外に音楽や共創体験、にNFTを付与するようなサービスが出てきています。

NFTオークションプラットフォーム

OpenSeaは、ブロックチェーンゲームやデジタルアートとして発行されたNFTを売買できるオークションサイトになります。誰でも作成したNFTを上場させたり、購入することができるプラットフォームになっています。このプラットフォームでは、今回紹介したようなサービスの他にも、Ethereum上でドメインサービスを提供しているENSのドメインや、ブロックチェーンと連動したVRゲームのワールドのアセット等も上場しており、購入できます。

おわりに

今回は、先週の記事で紹介したNFTについて、実際にどんな応用ができるのかを想像しやすくするため、既にリリースされているサービスをいくつか取り上げてみました。ただ、デジタルアートやデジタルコンテンツのNFTについては、最近市場が一気に大きくなり、参入者が増えた一方で、有識者からの警告や課題提起についても目立つようになっています。例えば、NFTを使った所有権が認められる法的根拠がない点や保証するフィールドが狭いことが認知されていないといった話です。また、ビジネスとしても、金融なのか古物なのかといった、ユースケースに応じて関わる法律が変わります(参考: NFTの法的論点クリスティーズで75億円で落札されたNFTの元JPEGファイルをダウンロードしてみた)。

さらに、NFT市場としては、一部のプラットフォームで取引されている資産にのみお金が集まっているという点にも注意が必要です(参考: NFTのピークは過ぎ去ったのか?少数のアプリケーションに依存するNFT市場、その分析データを公開)。ただ、NFTのみではなく、ブロックチェーンの市場全体で見ても、まだ発展途上な部分が多く、規制や技術、ビジネスの領域全てで、日進月歩で変化がある領域になっています。次の記事では、今回の続きとして、会員情報のID管理や、リアルコンテンツとの組み合わせといった事例について取り上げるつもりです。興味のある方は、お待ちいただけるとありがたいです。

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