NFTの事例について②

by 仲尾 和祥

はじめに

今回の記事も、NFT企画の1つになります。前回は、NFTの利用事例について、ブロックチェーンゲームとデジタルアート/コンテンツ、およびNFTオークションプラットフォームについて紹介しました。これらの事例は、今のNFT利用に関する一番多いユースケースです。一方で、今回の記事では、今後広がっていくと面白そうなプロジェクトについて取り上げてみました。

事例一覧

デジタルコンテンツのアクセス権管理

これらは、会員情報をNFTを用いて管理する方式になります。

まず、フォーブス誌の会員権については、広告表示がない有料会員情報をNFTを用いて管理する事例になります。この仕組みとしては、有料会員権をETHを用いて支払った際に、NFTが支払ったウォレットのアドレスに付与され、記事を読む際にウォレットをロードすることによって広告が表示されないようになっています。

少し古い記事ですが、この事例を取り上げた理由としては、ニュースメディア等での会員権のNFT利用については希少性と権利を組み合わせることで応用範囲が広いと思ったからです。例えば、会員数が限定されているプレミア会員に、優待権を付与したNFTを発行することで、必要のない優待権の二次流通市場や、会員権の希少性をあげることができると考えられます。

次に、Gaudiyですが、こちらはコミュニティの会員情報にブロックチェーンを用いたIDを紐づけることで、異なるメディア・コンテンツで、ブロックチェーンのIDを用いた相互連携を行うことができるようになる事例です。この仕組みは、Decentralized Identity(略称: DID)と呼ばれる電子証明書の検証技術とNFTを組み合わせた技術を利用しており、将来的な個人情報管理やID管理への活用を見込まれる技術となっています。

また、DIDは、トークングラフと呼ばれる情報分析への応用も見込まれています(参考: ソーシャルグラフからトークングラフへ、「人の繋がり」がブロックチェーンとNFTで変化していく)。トークングラフは、DIDによって管理されているID情報(ウォレットのアドレス)に対して、どのようなNFT等のトークンが付与されているかを解析することにより、ユーザーの分析を行う技術です。なお、この技術は、個人は複数のウォレットを切り替えることによって、複数のIDを用いて匿名性を確保することができるのも特徴になっています。

リアルコンテンツのデジタル利用

これらは、リアルコンテンツを購入することにより、そのコンテンツをデジタル上でも利用できるようになる事例になります。具体的には、ナイキや、グッチのような有名なファッションブランドメーカーの販売物に対してNFTが付与されており、新たなデジタル体験を提供するものになっています。

まず、ナイキの事例については、スニーカーに対してNFTが付与されており、このNFTを用いてCryptoKittiesのような繁殖ゲームを行うことができるようになっています。具体的には、スニーカーのNFTには、購入者がコピーできるデジタルスニーカーの数を設けることができるようになっており、このコピーしたデジタルスニーカーの二次流通やコレクションが行えるゲームを行うことができるようになります。

次に、デジタルファッションの事例については、仮想現実(VR)のような世界で有名ブランドメーカーが作成した3DモデルをNFTを使って販売することにより、一部のサービス上で、キャラクターに身につけさせたり、コレクションができるような事例になっています。

このように、リアルコンテンツ自身や、リアルコンテンツのブランドが、デジタルの領域で先鋭的なデザインを流通させる流れができてきています。将来的には、このようなコンテンツの広告に使われたようなモデルの流通といった事例も出てくると予想できます。

リアルコンテンツの来歴記録管理

これらは、リアルコンテンツの来歴履歴をNFTを用いて管理する事例になります。

まず、集英社の事例については、「マンガアート」と呼ばれる一部のマンガの切り抜きの印刷物をNFTと共に販売することにより、「マンガアート」の所有権の保証や、今後開拓予定である二次流通時の来歴記録を管理できるような仕組みになっています。また、Funkoの事例についても、同様に、フィギアの来歴記録管理が行えるような事例になっています。これにより、鑑定士のような専門的な価値保証を行うような仕組みがなくても、コンテンツへの真贋判定や流通履歴がわかるような仕組みになっています。

ただ、これらリアルコンテンツの来歴記録管理については、課題も存在しています。例えば、流通時の配送や取引の仲介といったリアルを介したコンテンツの伝達です。NFTについては、デジタル上の資産権の受け渡しのみ保証されており、リアルコンテンツの流通は保証されていないため、この仲介役の責任をどう担保するのかといった課題が存在します(参考: mercariX)。

また、来歴履歴の管理だけでは、コンテンツの品質保証が十分でないという課題もあります。このため、リアルコンテンツに対してセンサー情報等をひもづけることによって、品質管理を行うような取り組みが出てくる可能性もあります(参考: トヨタ、自動車ID活用し中古車の流通を追跡)。

おわりに

今回も、NFTを利用したニュース記事を取り上げてみました。今回の事例では、現在注目を集めているデジタルアートやデジタルコンテンツの領域以外での応用事例となっており、未解決の課題も多く存在しています。ただ、現在の中央集権的な仕組みでは解決できない課題への対応として、DIDのように新たな仕組みがブロックチェーン上で構築されています。このため、どこを最低限実現する必要があるのか、ブロックチェーン以外で解決すべき課題は何かといった部分も含めて検討し、ユースケースと共に新たな応用事例を作れるようにブロックチェーンスタジオは活動していく予定です。

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