高速かつ安全な次世代ブラウザBraveの紹介
はじめに
ブロックチェーンスタジオでは、ブロックチェーンを用いたサービスの研究開発を行っており、周辺技術の調査を行っています。その一貫で広告報酬の分配をEthereum上のスマートコントラクトで実現したり、Ethereumのトランザクション実行機能が組み込まれている次世代ブラウザ、Braveを利用してみました。
今回は、このBraveブラウザの機能や、実際に使ってみた感想等を紹介したいと思います。
Braveブラウザ
概要
Braveブラウザは、「プライバシーを重視した高速かつ安全な次世代ブラウザ」を目標としてオープンソースで開発されたブラウザです(2019/11/13にv1.0.0をリリース)。この目標を実現するために、Braveはインターネット広告業界による広告表示やトラッキング等の機能を問題視しており、下記の機能がデフォルトで実装されています。
- Brave SHIELDS: クロスサイトトラッキングやHTTPS接続へのアップデート、スクリプト実行をブロックする機能
- Brave REWARDS: 現在のインターネット広告とは別のコンテンツクリエイターへ資金提供を行う機能
- Braveを介した広告のリコメンド
- 広告による収益の仕組みをスマートコントラクトにより定義することで、関係者全員に利益を再分配する仕組み
- 滞在時間に応じた自動的なチップ送信
- コンテンツクリエイターへ自発的にチップを送る機能
- Brave Ad Block: Ad Blockリストを利用した広告ブロック機能
- 分散システムへのクライアントインターフェイス: WebRTC、IPFSやTorrent、Ethereumのクライアントとして動作する機能
なお、このBraveブラウザは、月間870万ユーザーの利用があり、今後も浸透する可能性がありそうです。
Brave Shields
Brave Shieldsは、サイトを跨って利用されているトラッキングやスクリプトの実行、利用者端末の識別を停止したり、HTTP接続をHTTPS接続にアップグレードする機能を提供しています。この機能により、Braveブラウザは、ユーザが想定していない情報の提供等を防止することができ、プライバシーを防止し、かつ高速なブラウジングを行うことができるようになります。
また、ブラウザのURLの隣にあるライオンのマークをクリックすることで、ブロックした内容を確認したり、一時的に許可できるようになっています。ちなみに、Braveの公式ページにアクセスした場合は、下記のように利用者端末の識別のみブロックされているようです。
Brave Rewards
Brave Rewardsは、現在のインターネット広告とは別の形で、コンテンツクリエイターのサイト運用費や活動資金の提供を行ったり、インフルエンサーへの支援を行うことができる機能です。この機能は、「事前に定義された倍率に基づいて広告費をトークンとして関係者に分配する機能」と、「トークンを送信することでコンテンツクリエイターやサイト運営者等の活動資金を支援する機能」の大きく2つの機能に分かれています。
広告費の再分配
Braveブラウザは、インターネット広告をブロックする代わりに、Braveブラウザにユーザーに最適化した広告通知を送信し、マッチングが成立することで、広告が表示されたユーザーに広告費の70%がトークンとして支払われます。
この広告通知は、ユーザの設定に応じて1時間あたり1〜5件通知されます。なお、この通知を無効化することも可能です。
トークンの送信
例えば、Braveブラウザを用いてTwitterにアクセスすると、各ツイートに対して下記のように「チップ」ボタンがツイートに埋め込まれます(例は、自分のTwitterアカウントのツイート)。
そして、このツイッターアカウントに対してチップを支援する場合、チップボタンを選択すると下記のようにチップを送ることが可能になります。
また、このチップ機能は、Braveクリエイターとして登録されているサイトであれば、Brave Rewardsの設定画面で滞在時間等に応じて自動的に支援を行うことも可能です。
Brave Ad Block
Ad Blockフィルタを用いてインターネット広告の表示を防止する機能です。基本的には、Easylistと呼ばれる広告ブラックリストの設定が読み込まれているみたいです(参考)。また、デフォルトでは、日本語版のBraveブラウザを利用している場合、ABP Japanese filtersの設定も利用されます。
なお、この設定は、Brave Ad Blockの設定でカスタマイズすることも可能です。
分散システムへのクライアントインターフェイス
Braveは、Ethereumを初めとした下記の分散システムへのクライアントインターフェイスを提供しています。
- Brave Wallet: Braveが内蔵するイーサリウムウォレットとDAppsブラウザ
- Web Torrent: WebTorrentを利用して、ブラウザに直接トレントファイルを表示することが可能
- Hangouts: ハングアウトコンポーネントを使用して、スクリーン共有等を行うことが可能
- IPFS Companion: ローカルにIPFSデーモンを立てることで、IPFSのファイルを表示することが可能
おわりに
今回は、「プライバシーを重視した高速かつ安全な次世代ブラウザ」として開発されたBraveブラウザを紹介しました。
実際に利用してみましたが、体感としては既存のブラウザと速度はそこまで変わらないような気がしましたが、広告のみを表示するサイト等を回避するには良い手段ではないかと感じました。また、クロスサイトトラッキングのブロックは、ブログサイトやニュースサイトを訪問すると一気に数が増えていることが視覚化され、少し面白いと感じました。
また、Braveブラウザに限らず、Ethereum等のWalletを組み込んだブラウザが次々と登場しています。スマートフォン上で動作することが可能な、このようなブラウザは、ブロックチェーンを利用したサービスの展開に非常に有用なため、今後もキャッチアップして情報を提供できればと思います。ちなみに、自分は、分散システムへのクライアントインターフェイスが思ったよりも使える上に、既存のブラウザと比べても機能に遜色がないと感じたので、少しの間、デフォルトのブラウザとして利用してみようと思っています。
最後に、弊社は、インターネット広告を事業にしていることもあり、Ad Blockを推奨するとは口が裂けても言えませんが、インターネット広告を起点とし、Ad Fraudのような問題が発生している事実もあります。自分たちも、Ad Fraud情報共有プラットフォームプロジェクトを始めとし、インターネット広告事業自体をなくさずに健全化への取り組みを広げていこうと考えているので、今後ともよろしくお願いします。
Author