Japan Blockchain Conference 2019に参加してきました

by 仲尾 和祥

はじめに

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ブロックチェーンスタジオでは、ブロックチェーンに関する情報を収集してサービス開発に用いることができないかという調査検討を行なっています。今回は、その一環として、1/31の1日だけJapan Blockchain Conference 2019の参加してきました。

今回のJapan Blockchain Conference2019では、44の展示と、2つのステージで並行でセッションを行われていました。展示の分類としては、仮想通貨取引所の紹介、ICOや仮想通貨の情報ページの案内、マイニング機器の展示が多かった印象でした。また、一部ではICOでの投資案内やブロックチェーンの応用事例の紹介もしており、歩いて話を聞いているだけでも面白かったです。

また、セッションの方も一部聴講してきており、その中で面白かったセッションの一部を紹介したいと思います。

楽天 Blockchain Lab

楽天のブロックチェーンに関する取り組みとして、楽天ポイントの現状の話と、応用事例を紹介するセッションでした。
この中で、楽天が現状1億人以上のユーザを抱えており、70のサービスが展開されている中で合計1兆ポイントをすでに発行していると話をしていました。また、この中でエンジニアがサービスを構築するのに楽天ポイントの連携部分が困難になってきており、そこを耐えうる基盤としてブロックチェーンでの解決を模索して、ブロックチェーンを使ったことがないエンジニアも簡単に利用できる基盤の構築をメインに行なっているという話をしていました。

また、楽天 Blockchain Labでは、楽天グループ内での実証実験としてブロックチェーンを利用した物を複数実施しているらしく、今回はユースケースとして、Rakuten Energy(REts)でCO2排出権の取引や、R-Starと呼ばれる社内通貨を発行している話がありました。また、楽天ポイントをブロックチェーンと組み合わせたような応用事例を考えているらしいです。


楽天 Blockchain Labのセッションで関心したのは、楽天ポイントの実証実験に踏み切れていることです。楽天ポイントを軸にした自社サービスが、様々な分野で展開されていることにより、楽天ポイントと連携すること自体が結構な技術的な負担になっていること、そしてこれを解決するために楽天Blockchain Labで使いやすいブロックチェーン基盤を構築することが必要になること自体はブロックチェーンを触っていると発想できるのですが、そこから実証実験に踏み切れるための実行力については、大きい企業だと難しいことを知っているので単純に驚きました。

また、ビジネス面から浮かぶ技術的な面として、現状、Ethereumを利用してトークンエコノミーを実施していたとしも、1兆トークンを発行しているようなサービスがあるのかと考えると、恐らくないので、初期に発行して今後増えないようなトークンで経済圏を構築する際のトークン数の指標にするには良い指標だと思いました。

Education + Blockchain

こちらは、ブロックチェーンに関する消費者教育の話を行うパネルディスカッションでした。
現状、ブロックチェーンの利用目的として、エンドユーザで一番多いのは、投資家達です。この投資家は2つに大きく分かれており、1つは、投資専門にベンチャーキャピタル等を運営していたりする人たち、もう1つは、普通の一般人が少額を投資して資産を増やしたい人たちです。今回は、この後者の人たちを教育しないといけないよねという風に議論が進んで行きました。

この中の議論ですが、大きく分けて、3つの視点に分かれていました。
1. 現在、投資に失敗した人たちは、どういう風に情報を得てきたのか
2. 仮想通貨とブロックチェーンについて
3. 現状のブロックチェーンプロダクトについて

まず、投資に失敗した人たちがどういう風に情報を得てしまっていたのかについてですが、こちらは、口コミやインターネット越しの成功した投資家たちの意見がメインだったと分析されているそうです。例えば、日本の事例だと、某人気YouTuberがとあるサイトでBTCを集めたような事例のように、人気のあるブロガーやインフルエンサーからの情報で失敗した人が多かったらしいです。また、日本人的な視点として、海外の人々に比べ、学校等で金融や投資について日本人は学ぶ機会が少ないため、投資に対する感覚がないことが問題だという話もありました。
このため、投資家たちに、ブロックチェーンがユーザにどんな利点があるのかといった情報を与える事による教育に加えて、技術的な情報も付与してあげる必要があるという結論が議論されていました。

次に仮想通貨とブロックチェーンについてですが、こちらは、仮想通貨とブロックチェーンは切り離して考えるべきだという意見が印象的でした。仮想通貨という投資や利益に直結するものと、ブロックチェーンという技術の影響やパラダイムシフトは異なるので切り放そうという話でした。また、ブロックチェーンを利用したソフトウェア開発を効率化させたり、ブロックチェーン自体を勉強することには、自分たちが利益を得る以外にも、技術的な感覚を身につけたり、Walletのバックアップ等のリテラシーを向上させるために有効なため、一般的なユーザも勉強は必須だという話でした。

最後に、現状のブロックチェーンプロダクトの状況について、という話がありました。こちらについては要約すると、現状、ICOで資金を一気に集めることができる状況は過ぎ去ってきており、2017年や2018年の状況から、一気に真面目にブロックチェーン技術を研究開発している人たちのみが残っていくだろう。そして、ブロックチェーン産業自体は、そこを追従できる体力ある人たちが残って一般化するという話でした。また、この中で、一般人がWalletを用いて自分たちで資産を管理して投資が行える状況になっていけるように教育が必要といったことでした。


このセッションについては、海外のベンチャーキャピタルやコンサルティング会社に勤めている方々のパネルディスカッションだったのですが、日本のWeb系会社が考えるブロックチェーンサービスの展開方法と真逆を言っているのが面白かったですね。以前私たちが協賛していたHi-Conや、すでに展開されているサービスの一部では、なるべく一般人がWalletや秘密鍵といったブロックチェーン特有の面倒臭い部分を排除していこうという動きに対して、海外では教育して使わせるようにしようとしていたのが面白かったです。
特に、登壇者の1人が言っていたのですが、「技術自体や使い方を勉強していると一瞬でひらめきがあり、一気に理解が進む感覚を経て自分の中でパラダイムシフトが起こり、知らなかった時の感覚がなくなって他の人に勧めることができるようになる」という感覚については、私も同意できるので、その感覚をどうマジョリティに起こさせることができるのかという面で挑戦するのも1つの方向性なのかと感じました。

おわりに

Japan Blockchain Conference 2019に参加してきましたが、ほとんどのセッションや展示ブースの人たちが海外の方が多かった印象でした。同時通訳の機材を使いながらセッションを聴講していましたが、英語を読んだり書いたりするだけでなく、会話もできるようにならないといけないととても感じました。

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