Blockchain Studio プロジェクト紹介

はじめに

先日、弊社のアドテク事業本部がAI事業本部のAI tech studioに組み込まれ、Blockchain StudioもAI事業本部へ組み込まれました。この中で、Blockchain Studioでは、データ利活用が強く叫ばれている世の中で、 実データを保持している人や組織が保護されていない ことや、 データ利活用を進めている組織への監視が不十分である ことに注目し、これらの問題を解決する技術の研究開発を行う役割を担います。そこで、本記事では、現在進めているBlockchain Studioのプロジェクトの概要を紹介したいと思います。

プロジェクト紹介

APIs (Astronomical Private Information society)

APIs (Astronomical Private Information society) は、実データを保持している人や組織を保護しながら、データ利活用を進める組織への統計情報を提供する仲介プラットフォーム構築を目指すプロジェクトです。

近年、欧州におけるGDPRの施行等の個人情報の取得や取り扱いについての厳格な規制が行われています。また、日本でも、個人情報の取得と取り扱いに対して、独占禁止法の適用範囲拡大を始めとし、ITプラットフォーマーへの規制を広げる動きがあります。しかし、一方で、データ利活用として、統計情報を用いた分析やプロファイリングを行い、新たなサービスや市場の創出が必要となっています。

この中で、個人情報のような保護されるべきデータから統計情報を作成・提供するには、専門的な知識を必要とする上、業種や業界によって適用される規制やガイドラインが異なっています。このため、各社がそれぞれ知見を溜めて統計情報を作成するような対応を行なっています。しかし、「『個人情報』の言葉が、氏名や住所のような限定された情報のみを指しているという誤解が存在する」、「k-匿名化のような安全性指標の設定が各社で対応しており、問題が顕著化するまで秘匿される上、技術的な情報までは公開されない現実がある」と言った問題が存在しており、プロセス改善が難しい状況にあります。

そこで、Blockchain Studioでは、2019年5月から APIs という研究プロジェクトを発足し、個人情報を集約し、統計情報として提供するオープンプラットフォームの構築を目指して活動してきました。(参考: White Paper Project vol.9発行&発表会レポート)このプロジェクトでは、情報利活用を健全に行えるように、集約した様々な情報から、利用目的に合わせた統計情報を提供できるオープンプラットフォームの構築を目指しています。具体的には、「サービス運営会社が直接個人から情報を取得する」形から、「エンドユーザとサービス運営会社の間に互いに監視できるプラットフォームの構築し、利用目的に応じた統計情報をデータ提供者の合意のもとに提供される」形へ移行することを目指しています。また、将来的には、本プラットフォームをオープンな分散システムとして提供することで、統計情報の生成ノウハウの共有や改善を活発に行うことができるようにしたいと考えています。

APIsDescription

APIs の名前の由来:

  • apis:
    ミツバチの英単語。ミツバチの世界では、「無数のハチが蜜を巣に集めて加工して幼虫や女王へ提供する」ことが繰り返されています。このミツバチの世界のように、世の中に溢れている無数の情報をプラットフォームに集めて統計情報として提供できるような世界を目標にしています。
  • Astronomical Private Information society:
    世の中に溢れ返っている秘匿された情報が集約された社会

AdFraud情報共有プラットフォーム

AdFraud情報共有プラットフォームは、CA Wiseの「BOSATSU」と、 APIs プロジェクトで研究開発した情報転送技術を組み合わせ、AdFraudを始めとした不正に対する情報を共有し、健全なマーケットの創出を目指すオープンプラットフォームを開発するプロジェクトです。

CA Wiseでは、AdFraudを始めとする不正対策を行うため、情報を収集し不正対策情報を提供するサービスを提供してきました。また、Blockchain Studioでは、 APIs プロジェクトを進める中で、ブロックチェーンと暗号技術を利用し、インターネット上で相互提供される情報を秘匿転送するプロトコルを開発していました。さらに、このデータ転送技術とデータマイニングにおけるデータジャケットの考え方を導入することで、データの利用目的に応じたデータを検索することができます。

本プロジェクトでは、CA Wiseを始めとした不正対策の情報を保持する組織が相互に情報交換できるコンソーシアムの構築を目指します。このコンソーシアムでは、既に利用実績のある不正対策情報や、各社が健全と判断したホワイトリスト等のネットワーク情報を公開し、これらの情報を利用したい企業が利用目的と共に申請することで取得することができます。これにより、それぞれの組織における不正対策を改善していければと考えています。また、提供された情報を2次利用されることを防ぐため、何の情報をどう利用するのか、データ提供組織とデータ利用組織間で電子契約を締結し、この情報を改竄できない履歴データとして保護することで、データの2次利用を防止します。これにより、データを収集している企業の情報が漏洩して不利益を被ることを防ぎながら、不正対策情報を健全に利活用できるネットワーク構築を目指します。

BosatsuAI

相互アイデンティティプラットフォーム

相互アイデンティティプラットフォームは、提供された個人情報の正当性を計測できるプラットフォーム構築を目指すプロジェクトです。

APIs では、利用者の能力と実知識に応じて、集約した情報を統計情報へ加工することが求められます。このため、利用者の能力や実知識を推し量るために取得する情報が正しい必要があります。

しかし、昨年度Blockchain Studioで実施した、パーソナルデータを自らの価値に変えるデータ流通プラットフォーム「Data Forward」の実証実験において、ユーザが自ら情報を入力した情報の中に外れ値となるような情報が混在することが確認されました。また、「DataForward」のような報酬が得られるサービスや、ソーシャルゲームのようなサービスでも同様の問題が発生すると考えられます。

そこで、本プロジェクトでは、取得する情報の正当性を確保するため、自己主権型アイデンティティ(SSI: Self-Soverign Identity) の技術を拡張し、取得情報の信頼性を向上することを目指します。自己主権型アイデンティティは、信頼された組織がユーザの情報を承認し、正しい情報をユーザの同意のもとで譲渡される考え方が一般的です。しかし、一部の情報については、信頼された組織を用意して承認することが難しい場合があります。そこで、本プロジェクトでは、信頼された組織がユーザから渡された情報を承認する形ではなく、複数人が評価したユーザの情報を集計し、その情報をユーザが承認することで、ユーザが開示している情報の信頼性担保を行うプラットフォーム構築を目指しています。

Blockchain Studioでは、この情報を保証する第三者と情報提供者の関係性と、情報を保証した人数から情報の正当性を計測できるプラットフォームの開発と実証実験を行なっていきます。これにより、提供情報の質を向上させると共に、データ利用者の正確なスコアリングを行うことができ、このスコアに応じて情報提供者が安心して情報を譲渡できるか計測できるプラットフォームが構築できます。

Self-SoverignIdentity

おわりに

本記事では、現在稼働しているBlockchain Studioのプロジェクトを紹介しました。Blockchain Studioでは、データ利活用が強く叫ばれている中で、 実データを保持している人や組織の保護 や、 データ利活用を進めている組織への監視が不十分である ことに注目し、 APIs を中心に、ブロックチェーンを基盤とした技術の研究開発やプラットフォーム構築を目指して活動しています。これらのプロジェクトを一緒にやってみたい、技術共有をしてみたい、非中央集権型のプラットフォームを構築することで実現したいビジョンがある等、少しでも興味があれば、問い合わせページからご連絡いただけると嬉しいです!

また、AdFraud情報共有プラットフォームに利用している情報転送技術については、Amazon Managed Blockchainで作成しており、設計等の一部をブログで公開したいと考えています。最近、少し更新が止まっていたブログでしたが、また投稿を再開する予定なのでお待ちください。

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